朝だった。いつもより少しだけ早く目が覚めた。
窓を開けると、空気が冷たくて透明だった。鞄の中で3冊のノートが重なっている。その隣には、まだ何も入っていない空間がある。新しいノートのための場所だ。
今日は、ノートを買いに行く。
あの文具屋へ
文具屋に向かった。1冊目のノートを買った、あの店。商店街は戦いで壊れた屋根を修理している店や、瓦礫を片付けて花を植え始めている軒先もあった。文具屋の看板は、あの日と同じように少し傾いていた。
店主のおじさんが「またノートかい」と笑った。あの日と同じ、目が細くなる笑い方。「4冊目だろう。覚えてるよ」。1冊目を買ったのがこの店だと、おじさんは覚えていた。
棚の前に立った。一番下の段に、1冊目と同じ100円のノートがある。何を書くかもわからないまま、一番安いのを選んだあの日。
今度は、少しだけ良いやつを選んだ。表紙がしっかりしていて、雨に強い紙のやつ。もっと遠くまで行く気がした。だから、旅に耐えるやつがいい。
会計のとき、おじさんが僕の手を見て言った。「字を書く手になったね。前に来たときは、ペンの持ち方がぎこちなかったよ」。
自分では気づいていなかった。ペンの持ち方が変わっていたらしい。3冊分、書き続けた手だ。おじさんにはそれが見えていた。
北か、海の向こうか
店を出ると、崖の方からドスンドスンと地響きが聞こえた。ガリョウだ。朝からスクワットをしている。最初に出会った日と同じ場所で。ただ、あの頃は怖くて近づけなかった背中が、今は懐かしかった。
クロワは宿の机に見たことのない地図を広げていた。海岸線が複雑に入り組んだ、精密な地図。クロワの目が、未来を設計している目になっていた。
次はどこに行くんですか?
北だ。
海の向こうだ。
2匹が同時に言って、顔を見合わせた。一瞬、昔のようにバラバラになりかける空気が流れた。でも、一瞬だけだった。
……両方行けばいい。順番に。北を経由して、港に出る。そこから海を渡る。合理的なルートだ。
……行くか。
設計だ。
ガリョウが「行くか」と言ったとき、クロワが「設計だ」と返すまで、もう棘がなかった。
最初の一行
新しいノートを開いた。真っ白な最初のページ。
「4冊目。今日は晴れ。3匹で北に向かう。」
それだけ書いて、閉じた。続きは歩きながら書けばいい。
行きましょう。
朝日を背中に受けて、3匹は歩き出した。ガリョウが先頭で、クロワが地図を片手に、僕はノートを鞄に入れて。いつもの並び方だった。
丘を越えた先は、まだ白い道が伸びていた。どこまで行くかはわからない。
3匹の足音が重なっていた。それだけで十分だった。
その夜、ノビはノートにこう書いた──
4冊目のノートを買った。文具屋のおじさんが「字を書く手になったね」と言った。そういうことだと思う。