試合の前夜、ノビは眠れなかった。
天井を見つめながら、明日のことを考えた。対戦相手の顔。試合場の広さ。審判の笛。全部が頭の中を回る。時計を見ると午前2時だった。
……眠れません。
知ってる。
ガリョウはドアの外に座っていた。眠れないのを知っていた。
眠れない夜はある。それでいい。
眠れない理由
クロワが事前に言っていたことを思い出した。
アスリートの78%が、重要な試合の前日に睡眠問題を報告している。眠れないことは失敗ではなく、準備した証拠だ。何も感じない人間は、何も準備していない。
それを聞いて少し楽になりました。でも眠れないことに変わりはない。
1日前の睡眠は試合パフォーマンスに影響しない。影響するのは2〜3日前の睡眠だ。今夜眠れなくても、体はすでに十分な休息をとっている。
データは正直だった。眠れないことへの不安が、眠れない理由の大半だった。
前夜にできること
ガリョウが言った。
眠れないなら、起きていろ。
……起きていていいんですか?
眠ろうと頑張るほど眠れない。それが人間の体だ。眠れないなら、起きたまま体を休めればいい。目を閉じて、呼吸だけに集中する。それで十分だ。
明日のことを考えてしまいます。
考えが来たら「来た」と気づいて、呼吸に戻れ。試合のことを考えないようにするのではなく、考えが来るたびに呼吸に戻る。それだけでいい。
夜明け前
午前4時頃、目が覚めた。少し眠れていたらしい。
ガリョウはまだ外にいた。
少し眠れたか。
……はい、少し。
それで十分だ。
今日、勝てますか?
ガリョウはしばらく黙っていた。それからゆっくり言った。
お前がやることをやれば、結果は後からついてくる。勝てるかどうかは、俺にはわからない。でも、お前がお前らしく動ける状態にあるかどうかは、わかる。
……どうですか?
問題ない。
夜明けの光が差してきた。ノビはゆっくり立ち上がった。──
眠れない夜があった。 でも体は休まっていた。 夜明けが来た。 やることをやるだけだ。